スライド1 表紙 Phase Ⅵ
これまで行ってきた研究
NPC/N比の理論と構造について説明します。
NPC/N比を用いて必要なタンパク量をもとめるということは・・・・
栄養量の算定方法は、対象とする集団、個人を対象、設定方法はそれぞれの目的に合わせて算定します。
何れの設定方法の場合に於いても、基礎代謝量が基本となり、基礎代謝量に食事誘発性熱産生、活動強度、疾病や怪我による損傷の有無を加味し、総エネルギー消費量を算定します。
タンパク質量の決定では、基本的に窒素係数に基づいた係数を利用したり、体重1㎏あたりのタンパク質量を利用したりして算定しています。
本来、栄養量の算定では、たんぱく質がエネルギー産生のために利用されるのではなく、体構成、および、生理活性物質の合成をするために、糖質と脂肪で十分なエネルギーを供給することが重要となります。
栄養算定手順としては、ハリスベネディクトの式、基礎代謝基準値、その他の基礎代謝を算定する計算式を用いて総エネルギー消費量を算定します。ここで考えなければならないことは、この総エネルギー消費量の中にはタンパク質が含まれているという事です。さらに、そのタンパク質は、エネルギーとして算定されているということです。前述のタンパク質の本来の摂取目的である体構成、生理活性物質の合成が本来の働きとの齟齬があります。そこで、糖質と脂肪で十分なエネルギーを担保し、たんぱく質は燃焼に回らず、体構成および、生理活性物質としてはたらく指標としてNPC/N比がある。この指標を利用することにより総エネルギー消費量から活動強度、損傷状況を考慮したタンパク質量を算定することができる。NPC/窒素比、とは、糖質と脂肪のエネルギー量が窒素の何倍あればタンパク質は熱産生のための消費を抑えることができるという一つの指標です。
後のスライドでNPC/窒素比とその理論について解説します。NPC/窒素比を用いてタンパク質量を求める一つの方法としての理論です。
スライド2 目次 目次
1 NPC/N比とは何か Ⅰ?
2 NPC/N比とは何か Ⅱ?
3 総エネルギー消費量から損傷状態を考慮したタンパク質量の算定 Ⅰ
4 総エネルギー消費量から損傷状態を考慮したタンパク質量の算定 Ⅱ
5 NPC / N比の構造 Ⅰ-a
6 NPC / N比の構造 Ⅰ-b
7 NPC / N比の構造 Ⅱ
8 NPC / N比の構造 Ⅲ
9 疾患・侵襲度別NPC/N比とタンパク質量例
10 NPC/N比を用いる利点
スライド3 何故、NPC/N比を考えるのか?
「タンパク質は糖質の炎の中で燃焼する」と、言われるように十分なエネルギーが投与されない場合タンパク質は“糖”を作り出し、燃焼及び血糖ちの維持に利用されます(この理論についてはクエン酸回路で説明します)。本来タンパク質は体構成、免疫、ホルモンなどの生理活性物質として利用されるべき栄養素です。そのタンパク質が、体タンパク合成に利用されず糖質や脂肪と同じく燃焼に利用されることはもったいない話です。タンパク質がタンパク質本来の働きをするためにエネルギー産生(燃焼)する糖質と脂肪から十分なエネルギーを担保することが重要です。そこで、たんぱく質が燃焼に利用されないように糖質と脂肪のエネルギーと窒素量(タンパク質)の割合を表す指標として、NPC/N比があります。
NPC/N比は、糖質+脂肪のエネルギー量とタンパク量が分かっていればNPC/窒素比は求めることができます。スライド左下の式を参照してください。
このphaseで説明するのは、前述の糖質+脂肪のエネルギー量とタンパク量が分かっていればNPC/窒素比が求められるという方法ではなく、算定した総エネルギー消費量に対して、疾病や損傷の重症度によってタンパク質の消費量が増える場合や、腎不全のようにタンパク質量を制限する場合においてもタンパク質が燃焼に利用されることなく体構成や、生理活性物質として働くことができるようにNPC/窒素比を利用してタンパク質量を求める方法です。
NPC/窒素比のNPCはnon-protein calorieの意味で、糖質と脂肪のエネルギー量を表します。Nは、Nitrogenで窒素を表します。この窒素1gには、タンパク質6.25gに換算することができます。これは、一般的な食品のタンパク質、1gの中に凡そ16%の窒素を含んでいますので、この窒素の量を別の量(タンパク質)に換算するための係数を窒素係数と言います。これはあくまで、一般食の場合は16%ですので、医療で用いる、輸液、アミノ酸製剤などは窒素係数が異なります。
糖質+脂肪のエネルギー量とタンパク量が分かっている場合、タンパク質量を窒素量にします。タンパク質量に窒素係数を乗ずることにより、窒素を算出することができます。例えば、62.5gのタンパク質の場合、6.25g×0.16では窒素量が10gになります。
例として、総エネルギー消費量1,750KcalのNPC/窒素比を求めてみます。
1750 Kcalには糖質、脂肪、タンパク質のエネルギーが含まれていますので、タンパク質のエネルギーを減じます。これがNPCです。さらに、窒素量を算出します。
算出したNPCを窒素量で除すると、NPC/窒素比、が算定されます。
スライド4 NPC/窒素比とは何か Ⅱ
タンパク質は、熱産生三大栄養素の一つですので燃焼します。しかし、タンパク質の働きは体構成物質、生理活性物質として利用されることが重要なのです。このタンパク質が燃焼する状況は糖質と脂肪の摂取不足。所謂、栄養量不足の食事もしくは、体内での過剰消費です。。ヒトは生命維持のために熱を産生したり、血糖値を維持する必要があります。その際に、タンパク質も熱産生、血糖値維持に回ります。それでも不足する場合は、自分の体の筋肉を分解させ、糖を作り出します。これが糖新生です。この状態が継続することはあまり良い状態ではないです。
スライド右の摂取エネルギーが少ない場合に起こる、カタボリックの状態です。カタボリックとは、簡単に言うと、筋肉が分解されている状態のことです。
日々の食事ではカタボリックなのかメタボリックなのかをはかり知ることは難しいことです。ですので、5年に一度更新される日本人の食事摂取基準を参考にすることが重要です。
カタボリックの状態か否かを測定するには、厳密な方法として、 二重標識水法や窒素出納の測定をしますが高価な試薬を使わなければならないなど簡便にはできません。
一般の方なら簡単にできる方法として、体重の変化を見ることが有効です。
スライド5 総エネルギー消費量から損傷を考慮した、タンパク質量の算定Ⅰ
NPC/窒素比は、ヒトの体が損傷や疾病の重症度が高くなったとしてもタンパク質がタンパク質本来の働きが出来るようにする指標です。
総エネルギー消費量TEE( Total Energy Expenditure)とはヒトの体ではエネルギーを作り、消費しています。
消費は3つの要素から成り立っています。
一つ目は、基礎代謝(Basal metabolic rate :BMR) 生命活動を維持するために、必要最低限のエネルギー
二つ目は、食事誘発性熱産生(Diet Induced Thermogenesis:DIT)食後に消化・吸収・代謝を行うためにエネルギー消費が増え、体温や代謝が一時的に上がる現象で一日の総エネルギー消費量の約10%を占めます。要するに食べた栄養素を栄養にするために処理するために使われるエネルギーの事です。但し、食品の種類によって消化する時間が異なり、粥、ご飯などに比べ肉、魚などは消化時間が長くDITも高くなります。
三つめは、活動量(active factor:AF)ヒトの身体活動レベルを推定するために必要な身体活動の強度を示す指標であり、労作や運動の強度により異なります。また、個々の筋肉の量によっても異なります。
以上3つが総エネルギー消費量TEEを算出する根拠になります。同じ身長、体重だとしてもTEEが異なる理由は個人により1~3が異なるからです。例え同じ食事をしていても、体重の増加や減少が出てくるのは筋肉の量、消化能力、活動時の受ける負荷が異なるからです。
スライド6 総エネルギー消費量から損傷状態を考慮したタンパク質量の算定Ⅱ
NPC/窒素比を用いてタンパク質量を求める方法は幾つかあります。ここでは、スライド中の①、②を使って説明します。
①は我々が考案したNPC/窒素比を利用してタンパク質量を求める方程式です。この式は連立方程式を整理し簡便にタンパク質を算出できる式にしたものです。
①はNPC/窒素比を利用してTEEに対してNPC/N窒素比を設定した場合のタンパク質量を算出する式です。②は一見違う式のように見えます。しかし、同じ理論なのです。ひもといてみましょう。
TEE 、わる、( NPC/N比×0.16+4 )の NPC/N比×0.16は、タンパク質1gに対するNPC量を計算しています。ここには、タンパク質1gのエネルギーは含んでいません。そこで、タンパク質1gエネルギーである4Kcalを加えます。スライドの数字、28は、タンパク質、(エネルギーを含まない)、1gに対してのNPCが28ということです。そして、タンパク質1gのエネルギー4Kcalを加えると32になります。この32にはタンパク質1gとタンパク質+糖質+脂肪のエネルギーを含んでいます。TEE1,750Kcalの中にはタンパク質+糖質+脂肪のエネルギーの総量ですが、このTEE算定時点でタンパク質量は不明です。そこで、NPC/N比175で算定した数値32でTEEを除すると、タンパク質量が算出されます。要するに、タンパク質+糖質+脂肪のエネルギーの総量であるTEE1,750Kcalに、NPC/N比175で算出した32(1gのタンパク質を含むエネルギー量)が何個入っているのかを計算しているのです。
この計算例では1,750KcalにNPC/N比175で算出した1gのタンパク質を含むエネルギー量32が何個入っているのか。商は54.7ですので、1gのタンパク質を含むエネルギー量32が54.7個入っていることになります。必然的にタンパク質量は54.7gとなるわけです。
スライド7 NPC/N比の構造 Ⅰ―a
前スライドをイメージにするとスライド中の、ダイスに例えてみます。
NPC/N比175で算出した 32 Kcal(1gのタンパク質含む)ダイスがタンパク質+糖質+脂肪のエネルギーの総量であるTEEに対して何個分になるのかという事です。
∴TEE 1,750Kcalの中に32(1 gのタンパク質を含む)が幾つ入っているのかを計算します。
1,750÷32=54.7 g
TEE 1,750に対してNPC/N比175の時のタンパク質量は54.7 gになります。
この式は連立方程式を用いております。更に、暗算ができるように作成した式です。
また、この式の(175×0.16)は (175/6.25)とも書き換えることができます。何故なら、NPC/N比の175は175/窒素1gと書き換えることができるのです。
窒素1gをタンパク質に換算しますと6.25gとなります(175/6.25)=28になります。それにタンパク質1gのエネルギーを+4を足しますと32になります。
スライド8 NPC/N比、の構造 Ⅰ-b
一般的に、NPC/N比の範囲は100~200くらいの範囲で使用する場合が多いと思います。但し、重症の損傷、腎臓疾患の場合は暗算の該当外となるかと思いますが100~200までの範囲ですと暗算しやすいと思います。
先ず、150の数値を覚えておくと便利です。
150×0.16は24です。これに+4を足すと28になります。この28でTEEを除することにより、NPC/N比を利用した場合のタンパク質量が計算できます。
簡単に考えると「150<」の場合は、1.6をプラスしていけばよいという事です。160の場合は1.6をプラスします。150で24ですので25.6になります。170の場合は150から数えて2番目ですので1.6×2で3.6をプラスしていけばよいわけです。200では150から数えて5番目ですので1.6×5で8になります。150の24から8を足すと32.0になります。左図をご覧ください。「150>」の場合は150の24から1.6を引いていけば良いわけです。80の場合は150から数えて7番目ですので1.6×7=11.2ですので24-11.2=12.8になりますね。この1.6は窒素係数に連動しています。ですので輸液、アミノ酸製剤の場合は窒素係数が0.16よりも小さい数値となります。例えば、輸液、アミノ酸製剤の窒素係数を0.145とすると150では、21.75で+4足すと25.75になります。
0.16の28.0より2.25値は小さくなります。これで1,750Kcalを除すると68gになります。0.16で計算したときの値、62.5gに比べ5.5gほど多くなる計算になります。輸液や、アミノ酸製剤を使用することは特別な場合ですので一般食の場合は0.16を使う事が妥当と言えます。
スライド9 NPC/N比の構造 Ⅱ
更にNPC/N比を分解すると、
例として、
NPC/N比175を分解すると
175=糖質と脂肪のエネルギー。ここでは、タンパク質とタンパク質のエネルギー量は含まれていません。
175を可視化すると
175 Kcal/N 1 g(タンパク量に換算すると6.25 g)タンパク質のエネルギー6.25 g×4 Kcal=25 Kcalが隠れています。
可視化後
175 Kcal+25 Kcal=200 Kcalになるのです。
NPC/N比に単位がない理由はここにあります。
この200Kcalには、6.25gのタンパク質が含まれているという事です。
実は、NPC/N比175とは、総エネルギー量は200 Kcalであり、更に、タンパク質6.25gが含まれているという事です。
さて、スライド2枚前に② カロリー/窒素比利用の式: TEE /(( NPC /N比 + 25 )×0.16))という式がありました。この式にNPC/N比175を代入してみましょう。
TEE / (( 175/N比 + 25 )×0.16)
の値は32ですので1,750/32=54.7gになります。
このような式でも、NPC/N比を利用して総エネルギー消費量からタンパク質量を求めることもできます。
要するに、富士山の頂上は一つですが、登山口は静岡県ルート、山梨県ルートがあり、どちらから登っても頂上は一つだという事です。①、②はこのいい例です。
スライド10 NPC/N比の構造 Ⅲ
このスライドは、①と②の式を図で表したものです。
NPC/N比と、カロリー/N比が同じであることが分かると思います。
スライド11 疾患・侵襲度別、NPC/N比とタンパク質量例
この図は、NPC/N比を用いて一般食100Kcalgあたりに含まれるタンパク質量をグラフにしたものです。
我々が行ったヒト試験では、成人男女の平均NPC/N比は凡そ200前後となりました。これをタンパク質量にすると約55g前後です。
スライド12 NPC/N比、を用いる利点
NPC/N比でタンパク質量を算定することにより、以下の点が考えられる。
その1 病態に適応したNPC/N比を選択することによりタンパク質の過剰投与や過少投与の弊害を防止できる。
その2 TEE(Total Energy Expenditure(総エネルギー消費量))からNPC/N比を利用して、病期に適したタンパク質量を求めることができる。
その3 選択したNPC/N比により病態の重症度を推測することが可能であり、医療職間の共通言語となり得るのではないかと考える。今後の課題としては、それぞれの疾病の窒素出納や、病期ごとの消費エネルギー量を測定し、疾病の重症度や病期に適合するNPC/N比を検討する必要があると考える。











