恒常性 水分と浸透圧
スライド1 表紙
Phase1では恒常性(homeosistasis)水分と浸透圧
スライド2 目次
スライド3 ヒトの体と水分
私たちの生命の起源はどこにあるのでしょうか?
「海」?
古代の海は現在の海水塩分濃度の1/100程度だったと言われています。陸地は「パンゲア」という始祖大陸。その環境で生命の起源が始まりました。この時のNa濃度が約5mEq/Ⅼ(溶液1L中に溶けている溶質(原子量若しくは分子量)の当量数:)そして、何万年もかけて海中で原生生物が生まれ、形が出来上がりました。海中の生物が多くなり手狭になり、生存競争から一部の生物が陸地に生活の場を見つけました。しかし、課題があります。それは、酸素です。酸素は毒、しかし、何万年もかけてこの毒をうまく利用して生き延びた生物がいます。この海から陸へ出たときの海の塩分濃度が145mEq/Ⅼです。現在の海水塩分濃度の約1/8位でしょうか。此処で5mEq/Ⅼ・145mEq/Ⅼという数字が出ました。不思議な事に私たちの体の中にはこの「記憶」が存在します。それは、細胞です。細胞内のNa濃度が約5mEq/Ⅼ、そして細胞の外のNa濃度が約145mEq/Ⅼです。病院で血液検査をしたときにデータの中にNa、K、Clという項目が出てきます。その数字、Naを、23。Kを39。Clを35.5で割って合計してみてください。そうすると凡そ9に近い数値が出てきます。9は9gです。1Ⅼの血液の中に塩が9g入っているという事です。1Ⅼに9gですので、塩分濃度は約0.9%ということになります。0.9%=生理的食塩水の濃度ですね。検査データのNaの数値は大体140~145mEq/Ⅼ程度だと思います。
私たち生物が海から出たときの海水の濃度145mEq/Ⅼとほぼ同じですね。私たちの体には「海」の記憶が残っているのですね。
スライド4 水は浸透圧により動く
体の中では水が動きます。何処からどこへ移動するのでしょう。大きく考えると「口」から入って「尿・糞・汗・不感蒸泄」ですが、体の中でも移動はあります。体内を流れる大きな川(血管の中を流れる血液)から血管と細胞の間、そして、細胞の中。あまり意識はしないですが、この調整は生命の維持に係わる大きな流れです。何せ、37兆個もの細胞に水を配達する訳ですので、決して軽んじてはならない動きです。ただ、闇雲に水が動いているというわけではありません。ある調整機能があって初めて水が動きます。先ず、第一関門は血管壁です。血管壁から細胞の方へ栄養や酸素が移動していきますが、水も同じです。水は血管壁を通り、細胞膜を通過して自由に行き来します。だからと言って自由に行き来できるわけではありません。先ず、循環血漿量を確保しなければなりません。循環血漿量とは血液の量です。血液の量が確保されていなければ酸素や栄養を供給できなくなります。この循環血漿量を第一に維持しようとします。この時重要となるのが「浸透圧」です。この浸透圧によってどこへでも移動できる水が調整されている訳です。すこし難しくなりますが、この浸透圧にも「通すもの」と「通せない物」を調整しているのが「結晶(しょうしつ)性浸透圧:電解質・ブドウ糖・アミノ酸」と「膠質(こうしつ)性浸透圧:アルブミン(アミノ酸の集まったもの)」です。平たく言えば、通すものは通し、通したくない物は通さない。この調整が生命を維持する最大の調整機能と言っても過言ではないでしょう。
スライド5 ヒトの浸透圧の正常値
血漿浸透圧は「285mOsm/L」に調整されています。計算上NaClは300mOsm/Lなのですが、100%解離していないため285mOsm/Lで血漿浸透圧は成り立っています。要するに285の力で引っ張り合っていると考えても良いですね。この285mOsm/Lの浸透圧でヒトの体の水を調整しています。私たちの体の中の血液の中の水分なんて見えるわけではないですのでなかなかピンときません。しかし、実際にこの浸透圧の変化を経験したことが有るはずです。それは下痢です。特にお子さんの場合、病気の時に水分補給として一部のスポーツ飲料を与える場合があります。その際に注意しなければならないのが飲料の浸透圧です。あるスポーツ飲料は浸透圧が高いせいで体から腸管へ水を引っ張ってしまってかえって下痢を助長する場合があります。その際は、薄めて与えた方がいいわけです。また、大人になってアルコールを飲む機会もありますが、深酒をすると喉が渇いたような状態になる。アルコール飲料は水分ですが、浸透圧が半端なく高い。方だから水分を引っ張り出して尿として排泄する。ですからアルコールを飲むとトイレが近くなるのです。
私たちの日常に浸透圧の影響はあります。
スライド6 浮腫(むくみ:edema)とは・・・
さて、浸透圧と浮腫の関係ですが、疾病によって浸透圧によらない浮腫もありますので疾病による浸透圧は割愛します。疾病による浮腫は別のphaseで説明します。
疾病意外と言っても全く疾病が関係しないわけではありません。疾病意外と言えば、朝履いた靴が夕方にきつくなることは誰でもが経験することではないでしょうか。これは重力や筋ポンプの機能低下によるものです。浸透圧による浮腫は話が違います。前スライドでお話しました「膠質性浸透圧」の低下による浮腫。これは、血管内で水を引き留めておこうとする力が弱くなり、水が血管外に漏れてしまう。その結果、血管と細胞の間にある組織間質という場所に水が移動してしまった結果浮腫が起こるのです。それでは、何故、血管内から水を離してしまうのでしょうか。それは、膠性浸透圧を担っている「アルブミン」というタンパク質が水を引っ張る力があるからです。このアルブミンという物質は分子量が66,000という非常に小さい分子です。分子量が小さい粒は水を引き留める力があります。ですからこのアルブミンが減少すると水を血管内に引き留めておく力が弱くなり細胞と血管の間にある組織間質という場所に移動してしまいます。アルブミンが減少する状態としては尿に漏れて体外に出てしまうという病気がありますが、栄養状態が悪くなった場合にアルブミン値が低くなります。特に高齢者では「年だから肉や魚はあまり食べなくてもいい」と言ってはダメなのです。元聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生は晩年まで大好きだったステーキを食べていました。また、京都の曼陀羅山寂庵の庵主、瀬戸内寂聴さんも晩年までステーキを好んで食べていました。ステーキだけがいいのではないですが、動物性たんぱく質はアミノ酸構成が優秀です。「年をとったら肉を食え!!!!」です。栄養の評価方法はいろいろありますが、その一つにアルブミンを測定して栄養状態を判定する方法が有ります。アルブミン値の基準値は4.0g/dⅬで、凡そ2.8g/dⅬ以下になると低栄養による低アルブミン性の浮腫が発生しやすくなります。
スライド7 高齢者は脱水になりやすい?
ヒトの体の水分量は年代により異なります。また、男女や肥満の有無によっても異なります。それではヒトの体の中に水はどの位あるのでしょうか。新生児では約80%、小児で70%、成人男性で60%、成人女性で65%、高齢者では50%程度になります。高齢者はもともと水分量が少ないわけですので余力少ない分環境変化に対する対応も鈍化しやすいのです。水分の摂取が不足すると若い世代より脱水は起こりやすいのです。また高齢者では口渇感が低下しやすいです。「喉が渇かないから水分を摂らない。」のではなく水分一定の量を決めて摂取したいものです。例えば500ḿLのペットボトルに水(お茶など)をいれ午前中にどのくらい飲んだのかが分かるようにしておく、午後にも同じように準備しておくと良いでしょう。水分の摂取は高齢者に限らず、喉が渇いてから飲むのではなく、何か行動を起こす前に摂取することが望ましいです。「転ばぬ先の杖」ならぬ「脱水になる前の水」ですね。
スライド8 なぜ水分が必要なのか→尿量との関係
水分の摂取が重要な事は皆さんがご存じの通りです。それでは、なぜ水分の摂取が重要なのでしょうか?ヒトの体の中では日々代謝が行われ老廃物が発生します。この老廃物をそのまま体内に溜まってしまえば致命的な障害となります。そこで、老廃物を排泄しなければなりません。老廃物を水に溶けるように科学的な処理を肝臓で行います。水に溶ける形にするという事が肝心なのです。例えば、タンパク質の最終産物がアンモニアです。アンモニアは猛毒ですので、そのまま排泄することはできません。そこで、肝臓でこのアンモニアを尿素に変えて無毒の状態で排泄します。血液に溶けているという事が重要です。この老廃物を含んだ血液は腎臓で最終選別をして、本当に不要なものだけを尿として排泄しますし、排泄してはいけない物質(水、タンパク質、糖、Naその他諸々)は徹底的に再吸収をします。腎臓では一日に約180Ⅼもの原尿(排泄される前に作られる尿)を作り、それを濃縮して1.5Ⅼの尿を排泄します。腎臓の濃縮機能(選別)は素晴らしい、この一言につきます。老廃物→水に溶ける→血液→腎臓(選別)→尿(老廃物)排泄。このような過程を経ます。ですから、尿の量が問題なのです。老廃物=溶質(水に溶けている側の物質)は水に溶けるのにも限度があります。例えば、水に塩を入れていくとどんどんと溶けていき高濃度の食塩水が出来上がります。そのまま塩を入れ続けていくと溶け切らない塩は結晶化したままの状態となります。この状態を「飽和状態(飽和食塩水)」と言います。これと同じように、ヒトの体でも老廃物の飽和状態が出現します。通常ヒトは一日に尿を1.5Ⅼ排泄します。ヒトの体では凡そ600mOsm/Lの老廃物が作られ、それを廃棄しなければなりません。通常の1.5Ⅼの尿量では問題なく溶けることができ排泄できます。しかし、何らかの障害が発生して尿量が極端に少なくなった場合には溶け切らずに体内に留置され、それが蓄積した場合には重篤な状態となります。この状態を「尿毒症」と言います。この尿毒症を起こすような尿量の限界が凡そ400mⅬです。それ以下になると危険です。この400mⅬ以下になった状態を「乏尿」と言います。










