タンパク質量とエネルギーの関係


 

スライド1 表紙
Phase Ⅵ これまで行ってきたヒト試験
タンパク量とエネルギーの関係
研究名 Study on a New Method for Setting Protein Amounts Using NPC/N Ratio
(NPC/N比を利用した新たなタンパク質量の設定方法の検討)
本研究は、第21回、日本病態栄養学会年次学術集会
一般社団法人 日本病態栄養学会、
於 京都国際会議場で発表しました

スライド2 はじめに
【はじめに】
 栄養量設定におけるエネルギーとタンパク質の考え方は、糖質と脂質からなる非タンパク質カロリー(non-protein-calorie:NPC)で十分なエネルギーを投与し、タンパク質(nitrogen:N)はエネルギー源として利用されることなく、体構成や生理活性物質の保持を担うために投与する。
 現在の栄養量設定では、糖質・脂質・タンパク質の熱産生三大栄養素はエネルギー量に換算して算定している。ここで問題となるのは、栄養量設定時のタンパク質をエネルギー源として算定している点にある。このことは、タンパク質はエネルギー源として利用されることなく、本来の役割を果たすために投与するという目的と矛盾する。  
 そこで我々は、NPCとNの両者の関係を表す指標として、NPC / N比(non-protein-calorie/nitrogen)を用いて栄養量を設定することが合理的であると考えた。

スライド3 研究目的
【研究目的】 
 対象者に適したタンパク質量が投与されているかを判断する指標の一つに、窒素出納がある。窒素出納±0は摂取タンパク質量と排泄量が一致している状態であり、この状態と対応したNPC/N比を考えることは、対象者に適した栄養量設定を考える際に合理的である。
 そこで我々は、対象者に適したタンパク質量設定を検証するために、健常な成人における窒素出納が±0となるNPC/N比の提案を目的とした。
【研究方法】
<対象者>   健常な成人男女5名
<測定機器> 呼気ガス分析装置(肺運動負荷モニタリングシステム)
体組成計(In Body S10) 活動量計(EPSON PULSENSE PS-500)
<方法>      ①測定データを用いて個々のTEEを算出した。
          ②NPC/N比300・250・150・100・50と設定した。
          ③TEE÷(NPC/N比×0.16+4)の寒河江の式(特許)を用い、タンパク質量           を算出した。
          ④各NPC/N比設定の食事を2日間、計10日間提供した。
          ⑤24時間蓄尿を行い、尿総タンパク・尿素窒素・Na・Kを測定した。
            尿の分析は株式会社エスアールエルに委託した。

スライド4 
本研究は食品を被験者が献立をたて、栄養量を規定し、厳密な計量を行い実施した。
用語説明 NPC/N比とは、NPC(ノンプロテインカロリー:熱産生三大栄養素のうち、タンパク質を除いた糖質と脂肪のエネルギー量)に対するN比(体内でのタンパク質は窒素で換算する。換算係数は窒素1gあたりのタンパク質量は6.25gとして計算。但し、一般食品における窒素係数0.16を用いた)
1日、2日目はNPC/N比 300とした。例として2000Kcalの場合のタンパク質量は38.5gである。献立上は低たんぱくの食事内容となる。
低タンパク食は腎臓疾患の患者に対応する食事で、体重60㎏に対してタンパク質量は0.62gであり、CKD重症度区分ではG3B以上の患者に対するタンパク質量となる。
3日、4日目はNPC/N比 250とした。例として2000Kcalの場合のタンパク質量は45.5gである。献立上は軽度の低たんぱくの食事内容となる。
低タンパク食は腎臓疾患の患者に対応する食事で、体重60㎏に対してタンパク質量は0.62gであり、CKD重症度区分ではG3B以上の患者に対するタンパク質量となる。
5日、6日目はNPC/N比 150とした。例として2000Kcalの場合のタンパク質量は71.4gである。献立上は一般食に相当するたんぱくの食事内容となる。
一般の方に対応する食事で、体重60㎏に対してタンパク質量は1.2gであり、多くのヒトはこの前後の量で食事をおこなっている。
7日、8日目はNPC/N比 100とした。例として2000Kcalの場合のタンパク質量は100.0gである。献立上は高たんぱくの食事内容となる。
タンパク質を必要とする患者に対応する食事で、体重60㎏に対してタンパク質量は1.7gであり、高たんぱく食に該当する。
9日、10日目はNPC/N比 50とした。例として2000Kcalの場合のタンパク質量は167.0gである。献立上は超高たんぱくの食事内容となる。通常の食事では摂取しない量のタンパク質であり、体重60㎏に対してタンパク質量は2.8gの超高タンパク質食である。一部のスポーツ選手では摂取可能であるが、一般のヒトの場合、継続的に摂取することは問題となる事がある。
以上10日間の食事を摂り、24時間蓄尿をおこなった。採取した尿は検査センターに分析を依頼し、尿中窒素の量を測定した。

スライド5 結果1

タンパク質摂取量と尿素窒素量
尿中尿素窒素(UUN):基準値 6.5~13.0 g/日。
UUNはタンパク質が体の中で分解した最終産物であり、摂取したタンパク質量を推定することができる。
図4のグラフは表1のテーブルをグラフにした。この図から、摂取タンパク質量が多くなるほど、尿中に排泄された窒素量が多くなっている。また、標準偏差(中央の赤い直線)にほぼ同じような傾向を示していることも示しています。被験者は健常者であることから正常な代謝がされていることが証明されています。


スライド6 結果2

用語説明
窒素出納の「正」と「負」
窒素出納が「正」とは、摂取したタンパク質が体の中に蓄積された場合は窒素出納“正”と言います。
窒素出納が「負」とは、摂取したタンパク質の量より尿中尿素窒素の量から換算したタンパク質量が多い場合を“負”と言います。食べた以上のタンパク質が尿中尿素窒素から確認されたという事は、体のタンパク質を分解したという事です。そのタンパク質とは「筋肉」なのです。絶食した場合や極端なダイエットをしている場合などに「負」になることが有ります。また、腎臓病でも「負」になります。
今回の結果では、NPC/N比が300・250の場合、窒素出納が「負」、NPC/N比が150・100・50の場合、窒素出納が「正」の傾向を示した。一般的に健常者のNPC/N比は150~200の間で設定します。2000Kcalの献立であれば、タンパク質は70g前後ですので、体重1kgあたりのタンパク質量は約1.2gですので、適正な範囲と言えます。この図では、NPC/N比150~200の範囲内で窒素出納が「正」を示しています。NPC/N比250~300では、窒素出納が「負」ですので、タンパク質量が不足している。NPC/N比200以下では窒素出納が「正」を示していますから。NPC/N比でタンパク質量を算出する場合、健常者の場合、この範囲で設定することが望ましいといえます。
 


スライド7 結果3 

この折れ線グラフは、前スライドの棒グラフを折れ線にして示したものです。
PC/N比に対して、どのあたりが窒素出納±0、になっているのかが分かると思います。

スライド8 考察

「日本人の食事摂取基準2015年版」では、タンパク質の推奨量は0.90g/kg体重である。今回の実験結果より、窒素出納±0となるNPC/N比における、タンパク質量の平均を算出すると0.95±0.17g/kg体重となった。推奨量と近い値となったことから、NPC/N比を用いて求める栄養量設定の方法は、有用性が高いと考えられる。
 JSPEN(日本栄養治療学会)のガイドラインでは、一般の非侵襲下でNPC/N比150~200と設定されており、今回得られた結果とガイドラインにおけるNPC/N比の範囲には、違いが見られた。また、今回の実験は、同一タンパク質量投与が2日間と短い期間であったため、尿素窒素量が正確に反映されていない可能性がある。
 より正確な結果を得るためには、同一のタンパク質量設定の食事を、7日間以上投与する必要がある。
今後は、より食事投与期間を長期間にし、NPC/N比の設定範囲を150~250と狭い範囲に設定することで、健常者に適したNPC/N比を検討していきたい。
 今後、全身の筋肉分布割合を考慮に入れたタンパク質量の算出に関する研究が必要になるだろう。


スライド9 NPC/N比とはなにか?

NPC/N比とは、熱産生三大栄養素の“タンパク質”“脂肪”“糖質”をどのように配分して摂取するのかを表す指標です。
PhaseⅠで熱産生三大栄養素のそれぞれの性質をお話しました。
栄養設定方法には幾つかの方法が有ります。何れの方法においても使用目的に沿って算定されています。
本来、栄養設定に於いて、重要な事は、タンパク質が熱産生に利用されることなく、生理活性物質、体構成成分として利用されるべきである。
そこで、我々は、タンパク質が生理活性物質、体構成成分に利用されるためには、糖質と脂肪でエネルギー産生を担うことが重要であり、(糖質熱量+脂肪熱量)とN(タンパク質)の比を表す指標のNPC/N比を用いて、タンパク質量を算出する方法を研究の主軸としてヒトの代謝試験を行ってきました。
計算式
タンパク質量=TEL/(NPC/N比×0.16+4)の式を考案した。

今後このホームページでNPC/N比の理論についてアップします。